電気自動車用バッテリーモジュールの火災を防止するための熱暴走の監視
顧客の抱える課題
一般に、リチウムイオンバッテリーはフル充電の状態よりも完全放電の状態の方が危険とされているため、EV用バッテリーモジュールやパックのメーカーの多くは、組み立て時に、ある程度充電された状態のバッテリーセルを使用しています。個々のバッテリーモジュールを接続すると、部品間に電流が流れ始めます。多くの場合、この電流の流れによってセルやモジュールの温度が上昇します。温度が上昇すると、システム内の電圧が低下して電流が増加し、温度がさらに上昇します。この温度上昇のサイクルは「熱暴走」と呼ばれ、その状態を放置しておくと、バッテリーの破損や、さらには施設内での火災を引き起こす可能性があります。
バッテリーマネジメントシステム(BMS)は、接続の緩みや内部の短絡をチェックすることで、温度を監視し、バッテリーの正常性を確保するために使用されます。しかし、BMSは通常、組み立て工程の後半になるまでシステムにインストールされません。そのため、組み立ての初期段階におけるセルやモジュールの温度監視は、狭い範囲の温度情報しか得られない携帯型の赤外線温度計を使って行うか、あるいは全く行わないのが一般的です。
ソリューション
サーモグラフィカメラは、熱暴走による温度上昇や危険な状況に関して、バッテリー組み立て工程全体を監視する機能をバッテリーシステムのメーカーに提供します。バッテリーの構成は組み立てラインによって大きく異なるため、何千もの異なるポイントの温度を測定できるサーモグラフィカメラは、重要なホットスポットを見逃すことがないようにするのに最適です。
FLIR Aシリーズ高性能スマートセンサーカメラは、バッテリー組み立てのすべての排気口を監視するように設置することができます。オンラインのカメラ制御インターフェースを使用して複数の監視領域を作成し、各ROIに最高温度アラーム閾値を設定することができます。EtherNet/IPを使用して、アラーム信号を産業用PLCに送信し、データロギングや、重要な温度閾値を超えた場合のアラーム表示灯の制御を行うことができます。この構成によって、過去の温度データの記録や、危険な状態が発生した場合の作業員への視覚的なインジケーターが得られるとともに、携帯型温度測定装置を使用した場合のヒューマンエラーの可能性を排除することができます。
FLIR Aシリーズの高性能スマートセンサーカメラは、設置が簡単で、オンラインインターフェースで制御することができます。
成果
A70のようなAシリーズのカメラを使用することで、熱暴走状態を検出するための温度測定の再現性と信頼性が向上し、携帯型温度計を使用する個々のオペレーターの作業と比べて、大きな改善効果が得られます。自動化され、改善された温度監視により、潜在的な危険性を迅速に検出することができるため、工場の従業員と施設の両方に対するリスクを低減することが可能になります。
FLIR A70サーモグラフィカメラによるバッテリーパックのテストの監視