断熱性能の違いを実感として伝えるために
フリアーシステムズのサーモグラフィカメラは工務店の施工力の高さをアピールするための必需品
佐藤工務店(埼玉県上尾市)では、日頃からサーモグラフィカメラを使って、住宅の不具合事象や自社の住宅の性能の高さを施主にわかりやすく説明しています。同社の佐藤喜夫社長に効果的なサーモグラフィカメラの使い方や活用法について解説してもらいました。
外から見えないものも画像により一目で
理解させることができます。
佐藤工務店は1968年の創業以来、レンガ外壁の家を主体に付加価値の高い住宅を提供しています。行政が進める省エネ講習会の講師も務めるなど、住宅の断熱気密技術に詳しい佐藤社長は、サーモグラフィ画像の利点を「見えないものを見せることができるところ。外から見ただけではわからないものを、根拠を持って伝えることができます」と語ります。
同社の建てる住宅は、原則ZEH(ゼロエネルギー住宅)で、断熱性能はU値0. 45 W/㎡・K、気密性能はC 値0. 3c㎡ /㎡以下が標準仕様。省エネ基準の地域区分5地域のHEAT 20(産官学でつくられたハイレベルな断熱基準)G1レベル、6地域なら同G2レベルをクリアする性能です。もちろん国が定めている省エネ基準0. 87を大きく上回っています。ただし、どれだけ性能がいいと数字で説明しても、一般の人には実感として伝わりません。サーモグラフィカメラなら、それらを画像で見せることで、違いをはっきりと伝えることができます。
例えば断熱性能の低い家でも暖房器具で温めれば暖かくなりますが、断熱性能の違いはなかなかわかりません。しかし、サーモグラフィカメラを使えば、熱がどんどん逃げていく様子がわかります。
「高い断熱性能を実現している工務店ならば、その性能を伝えるにはサーモグラフィカメラは必需品です。サーモグラフィカメラは工務店の味方。上手に使えば強力な武器になります」と佐藤社長は強調します。
サーモグラフィ画像の温度レンジを調整し
温度差がわかりやすい画像を作成
サーモグラフィ画像の温度レンジを調整し温度差がわかりやすい画像を作成サーモグラフィカメラで見せることができるのは、温度の違いです。その差をきちんと出せるタイミングや環境を整えることが重要なポイントです」と佐藤社長。
【画像1】は築2年とまだ新しい住宅のキッチン周辺のサーモグラフィ画像です。所有者から「寒いから調べてほしい」と相談がありました。開口部を閉めて換気扇を回すと、外の空気が部屋に入ってくる様子が温度差になって視覚的に確認できました。この事例では気密がきちんととれておらず、家の隙間から入ってくる外の冷気が寒さの原因だったため、気密工事をして熱が逃げないようにしました。
サーモグラフィカメラを使えば、漏水の様子も調べることができます。【画像2】は外壁の雨漏りの様子です。水で濡れた部分は温度が下がるため、漏水していると水の通り道がサーモグラフィ画像に現れます。わかりにくいときは、実際に水をかけるなどして漏水の経路のあたりをつけることもあります。こうした検査で大事なのは、検査の結果を明確に示すこと。ただ漫然と撮影しても伝わる画像はつくれません。サーモグラフィ画像の温度のレンジ(上限値と下限値の幅)設定を調整して、温度差がわかりやすい画像をつくることを佐藤社長は心がけています。「一般の人にわかりやすく伝えることもプロの大事な仕事」だと佐藤社長は言います。
確認してもらい、信頼を獲得
佐藤工務店では、施主に提案する際に、一般的な住宅と自社の住宅の性能差を実際の使用電力とサーモグラフィ画像を使って説明しています。電気料金は引き渡した施主の実績に基づくもの。断熱性能で冷暖房に差が出ることを説明する際に、サーモグラフィ画像で性能の違いを視覚的に伝えます。その延長線上で、完成見学会では、見学者にサーモグラフィカメラを渡して、自分たちで好きなように見てもらうようにしています。見学者に納得がいくまで確認してもらうこと、同社の家づくりに対する自信が伝わるようにしているのです。
現在、検討が進んでいる省エネ規制の強化(基準適合説明制度)で、つくり手は省エネ性能の説明を求められるようになります。基準の内容を理解しておくことはもちろん、自社の住宅性能をきちんと把握しておくことは必須です。
例えば結露の可能性の有無。高い断熱性能を持つ住宅であっても結露する可能性はゼロではありません。引き渡す際にサーモグラフィ画像を使って、「この部分が結露する可能性があります」と事前に説明しておくと、実際に結露した場合でも「言われた通りになりました」と、逆に信用につながると言います。反対に伝えていなかったら不信感を持たれ、クレームになることもあります。高性能をうたえば、その裏付けが求められます。つくり手が自分たちの建てた家のことをきちんと理解して説明できるようにしておくことが、これまで以上に求められるようになっているのです。
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