温度センサーの種類と特徴、購入時に重視すべきポイントを解説

あらゆる人にとって温度”は非常に重要です。研究・生産工程における品質確認や、機器の異常を完全に故障する前に発熱で予知するなど、人の目では判断できないごくわずかな温度変化をしるために、温度センサーは多くのシーンで活躍しています

温度の管理や感知はもちろん、調節や記録を目的に利用される機会も増え、温度センサーの需要は年々増加しています。しかし、温度センサーは種類が多く、いざ購入を検討しても「種類が多くてどれを選べばよいかわからない」「自社に適した温度センサーを購入するために、どのような特徴があるか知りたい」と悩む方は多いでしょう。

そこで本記事では、温度センサーの種類や特徴、購入時に重視すべきポイントについて解説します。

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温度センサーとは 

温度センサーとは、温度変化による物質・物性の変化を利用して温度を計測する装置(センサー)のことです。

体温・室温・水温・金属・内部温度・表面温度などさまざまな温度を計測できる豊富な種類の温度センサーが存在し、目的や用途に応じて使い分けられています。

数多くの種類が存在する温度センサーは、下図のように「接触式」と「非接触式」に大別されます。

温度センサーの分類

温度センサー

接触式

熱電対、測温抵抗体など

非接触式

放射温度計、サーモグラフィカメラ

 

接触式温度センサーの特徴

接触式温度センサーは、対象物に直接接触させて温度を計測する温度センサーです

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代表的な接触式温度センサーとして、理科の実験で使用する液体温度計(先端に水銀やアルコールが入っている棒状の温度計)、脇に挟んだり舌下にあてたりして体温を計測する体温計などがあります。そのほか、工業用途で使われる熱電対・サーミスタ・測温抵抗体・IC温度センサーなども存在します。

接触式温度センサーの特徴は以下のとおりです。

・感温部のみ計測できる(計測範囲が狭い)

・移動または回転する物体では計測できない

・気体、対象物の内部温度などを計測可能である

・接触すると危険な部位や物体では計測できない

・衛生面では注意が必要(特に食品や医療分野)である

・接触によって対象物の温度を変化させる可能性がある

接触式温度センサーは、対象物に接触させなければ温度を計測できないため、移動・回転中の物体や危険部位の計測はできません。また、温度センサーが接触することで、対象物の温度を下げたり不衛生にしたりするなど、対象物に何らかの変化を生じさせてしまう懸念点があります。

 

非接触式温度センサーの特徴

非接触式温度センサーは、対象物から発せられる熱エネルギーや赤外線を温度に換算するため、対象物に接触することなく温度を計測できる温度センサーです

代表的な非接触式温度センサーが、サーモグラフィカメラ(熱画像センサー)です。

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非接触式温度センサーには以下の特徴があります。

・計測範囲(面積)が広い

・高温箇所でも計測できる

・小さな物体でも計測できる

・計測完了までの応答速度が速い

・暗所や視界不良でも計測できる

・対象物の温度をリアルタイムで計測できる

・光沢塗装された物体や反射する金属は計測できない

・接触すると危険な部位や物体、動いている物体でも計測できる

・気体や対象物の内部温度は計測できない(固体や液体の表面温度は計測できる)

非接触式温度センサーは、対象物に変化を生じさせず、計測範囲内の温度を分布図として比較したり、小さな物体や移動・回転中の物体の温度をリアルタイムで計測したりすることも可能です。

接触式温度センサーの種類

接触式温度センサーには、主に熱電対、測温抵抗体などが存在します。

・熱電対:2種類の異なる金属をつないだときに生じるゼーベック効果を利用した温度センサー

・測温抵抗体:金属の電気抵抗値が温度に比例して変化する特性を活かした温度センサー

非接触式温度センサーの種類

非接触式温度センサーは、対象物から放出される赤外線の強度をとらえて温度を計測する温度センサーです。非接触式温度センサーには、1点のみの温度を計測するスポット放射温度計、移動・回転する物体の温度を計測する走査型放射温度計などが存在しますが、最も代表的なのがサーモグラフィカメラ(熱画像センサー)です。

 

サーモグラフィカメラ

サーモグラフィカメラ(熱画像センサー)は、対象物から放出される赤外線の強度を計測する、放射温度計の一種です。サーモグラフィカメラには大きく2つのメリットがあります。

メリット1. 対象物の変化を防げる

体温計のような接触式温度センサーは、正しく計測するために何度も対象物に接触させると、温度や物性を変化させてしまうおそれがあります。

一方で、サーモグラフィカメラは対象物に触れず、離れたところから温度計測が可能です。対象物に影響を与えないため、温度変化や物性変化などを防げます。

例えば、ラットのような小動物や、繊細で微小な物体などでも、温度を乱さず計測できます。また、食品・薬品・化学製品などを計測するときも衛生的です。

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さらに、温度変化の激しい物体や、高電圧部・危険箇所などに対しても距離をとって温度計測が可能なことも、非接触のサーモグラフィカメラならではの利点です。

メリット2. 温度分布を得られる

接触式温度センサーやスポット放射温度計は、感温部の温度を“点”として得ることはできますが、周囲の温度は計測できません。一方、サーモグラフィカメラは対象物とその周囲を“面”として捉えて計測できるため、広い範囲の温度分布を相対的に比較できます。

サーモグラフィカメラでは、検知した赤外線の強度が強ければ赤く色付けし、弱ければ青く色付けする画像処理を行うことで、温度分布を視覚的にわかりやすくしています。したがって、サーモグラフィカメラを使えば、現在使用している温度センサー(熱電対やスポット放射温度計など)が本来計測したい箇所を正確に計測できているか、計測箇所がずれていないかなどを、温度分布で視覚的に比較・確認できるのです。

このように、サーモグラフィカメラは対象物と周囲の温度がリアルタイムに短時間で温度分布として可視化されます。異常な温度変化や急激な温度上昇にも気付けるため、危険箇所への人の侵入検知や機械設備の異常動作感知、電気・住宅設備の保守点検などに役立てられています。

温度センサー選びで重視すべきポイント

さまざまな種類の温度センサーのなかから、自社に適した温度センサーを選ぶために重視すべきポイントを3つ紹介します。

耐用温度域

耐用温度域とは、温度センサーが使用に耐えられる温度範囲のことです。温度センサーを選ぶ際には、何度から何度までの計測温度で使用したいのかを検討する必要があります。

例えば、化学プラントや製造工場などで高温部を計測する場合と、冷凍庫や冷却装置などの低温部を計測する場合では、求められる温度域は異なります。

適切かつ正確に対象物の温度を計測しつつ、温度センサーの持つスペックを存分に発揮するためにも、利用目的に適した耐用温度域であることを確認しましょう。

精密度

対象物とその周囲の温度を鮮明かつ正確に把握するために、サーモグラフィカメラの精密度は忘れてはいけないポイントです。

精密度は、対象物の大きさと撮影距離によって左右されるため、計測するターゲットがどの程度の大きさかを必ず確認しましょう。対象物の大きさや撮影距離を考慮せずに計測してしまうと、実際の温度とは異なる数値が検出されてしまうおそれがあります。

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これには、サーモグラフィカメラの画素数と画像分解能が深く関係しています。画像分解能とは、カメラが検知できる1画素あたりの最小の寸法(単位:mrad)で、簡潔にいうと解像度のことです。画像分解能は、カメラに搭載された検出器の数やサイズ・レンズの視野角(FOV)によって決まります。画像分解能の数値が小さいほど、細かい画像で温度を計測できるため精密度も向上しますが、撮影可能な範囲は狭く(小さく)なります。

ただし、画素数と画像分解能に優れた高精度な温度センサーほど、価格も高額になるため、あくまで自社で求めている精密度を満たす温度センサーを選ぶようにしましょう。

価格

温度を計測する機能だけを持つ温度センサーと、温度管理や記録の機能も兼ね備えた温度センサーでは、当然ながら価格は異なります。

しかし、費用を抑えるために安価な温度センサーを購入すると、耐久性が不十分で故障やメンテナンスにお金がかかるおそれがあるため注意が必要です。自社の利用目的に応じて、スペックと価格のバランスをとりながら温度センサーを選びましょう

まとめ

温度センサーにはさまざまな種類があり、使用する場面によって求められる性能や機能は異なります。なかでもサーモグラフィカメラは、温度計測時に対象物の温度・物性を変化させず、リアルタイムで正確な温度を計測できるのが魅力です。また、対象物と周囲の温度分布を広範囲にわたって可視化できるため、迅速かつ正確に異常や障害を発見できます。

FLIR(フリアーシステムズ)は、世界シェア第1位を誇るサーモグラフィカメラのグローバルリーディングカンパニーです。50年以上にわたる研究開発の歴史を持ち、設計から販売、流通まで多様なソリューションを提供しています。FLIRでは、建物や施設のメンテナンス、電気・機械設備の点検などに適したプロ向けサーモグラフィカメラから、スマートフォンやタブレット対応のサーモグラフィカメラまで幅広く取り扱っています。また、独自の特許技術であるMSX(スーパーファインコントラスト機能)を有し、国内におけるメンテナンスや手厚いサポート体制もFLIRの強みです。

近年、新型コロナウイルス感染の検温装置として認知度が高まったサーモグラフィカメラですが、検温以外にも、建築・住宅設備の診断、機械・電気設備の保守点検、食品・薬品の衛生管理といったさまざまなシーンにおける課題を解決できます。

サーモグラフィカメラについてのお困りごとがあれば、ぜひFLIR(フリアーシステムズ)までご相談ください。

 

 

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