フリアーシステムズガス検知用赤外線カメラが、Borealis Stenungsund社の環境保全と安全対策を改善
石油化学プラントでは、肉眼に見えない炭化水素ガスを扱っています。 こうしたガスの大半は、何らかの安全上の問題を抱えています。 有毒性のガスや、長時間の曝露により人体に有害な作用を及ぼすガスも存在します。 さらに、高可燃性や爆発性のガスも存在します。こうしたガスの大半は、大気中に大量に排出されると環境に悪影響を及ぼします。 そのため石油化学プラントでは、ガス漏れ検査が極めて重要です。
スウェーデンのステヌングスンドにあるBorealis Stenungsund社(以下、Borealis社)の高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)プラントもこうしたプラントの1つです。ケーブルやワイヤーなどのLDPE部品を生産し、年間の総生産能力は35万トンにも達します。 Borealis社の破砕施設では、主に、エチレン原料の処理を行っています。エチレンは、高圧重合プロセスを経て「ポリエチレン」へと転化されます。
エチレンは可燃性の高い炭化水素です。 Borealis社は、施設内の安全性を向上させ、環境に及ぼす影響を軽減させるため、フリアーシステムズのガス検知用赤外線カメラを使用しています。 Borealis社では、このガス漏れ検知カメラの活用により、プロセスオペレータがガス漏れを完全に把握できる管理体制が整えられています。
ガス検知用赤外線カメラは、人間が対象物に直接接近せず、素早く測定が行え、ガス漏れをリアルタイムに可視化することができます。 通常の計測器では数値を頼りに検査を進めるしかありませんが、ガス検知用赤外線カメラでは、漏出ガスが明確な画像として表示されるため、より直観的に漏出の検出作業を行えます。 ガス検知用赤外線カメラは、小規模な漏出も離れた場所から検出できるため、人間が接近しにくい特殊な場所でも円滑に使用できます。 低密度ポリエチレンプラントのシフト管理者である、Jan Åke Schiller氏(は、次のように述べています。「ガス検知用赤外線カメラは新しい技術だったため、当初はかなり懐疑的でした。 しかし、ガス検知用赤外線カメラの動作性能を実際に目にしたら、すぐに考えを改めました。これは、ポリエチレンプラントや石油化学プラントでの漏出検査にまさに最適なツールです。」
ガス検知用赤外線カメラの特長
FLIR GF306ガス検知用赤外線カメラを導入する以前、Schiller氏らは、いわゆる嗅覚探知機を使用していました。嗅覚探知機では、1カ所の特定ガス濃度を測定し、百万分の1(ppm)単位のガス濃度値が得られます。 同氏は、次のように述べています。「ガス検知用赤外線カメラには、ガスを視覚的に明確に特定できるという大きな利点があります。 嗅覚探知機からは単に数値しか得られませんが、ガス検知用赤外線カメラでは、どんな場所もカメラレンズを向けるだけで簡単にガス漏れを検出できます。 そのため、検査時間が大幅に短縮されました。 今では、ガス検知用赤外線カメラのおかげで、業務開始の度に素早く検査を行えるようになりました。 迅速なスキャンにより、わずか30分ほどでプラント全体の約80%の点検が完了します。 仮に、嗅覚探知機を用いて同様の検出結果を得ようとすれば、10人がかりで丸2日間も作業する必要があるでしょう。」
それでもSchiller氏は、嗅覚探知機を完全に使用しなくなったわけではないと強調します。 「ガス検知用赤外線カメラと嗅覚探知機を併用しています。 ガス検知用赤外線カメラは漏出検出に使用し、嗅覚探知機は漏出の定量化に使用しています。」 同氏は、FLIR GF306ガス検知用赤外線カメラの感度の高さに感心したと言います。 「嗅覚探知機では100ppm未満との数値が示された場所でも、実際には漏出を確認できました。特に高感度モードで動作させると、カメラの感度は驚異的に向上します。これなら、約70m先の小規模なガス漏れも十分検出が可能です。 つまり、オペレータは、危険なガスから安全な距離を確保して点検を実施できるのです。」
高感度モード
特殊機能の高感度モード(HSM)は、全てのガス検知用赤外線カメラGFシリーズに搭載されています。 高感度モードでは、サブトラクション処理技術によりカメラの温度分解能が向上します。 サブトラクション処理とは、現行フレームから1つ前のフレームのピクセルを差し引く(サブトラクション)ことにより、フレーム間の差を強調することで、この処理により映像内で移動するガス漏れを鮮明に抽出することができます。
メンテナンスチームには、修復すべき漏出箇所が全て報告されます。 Schiller氏によれば、嗅覚探知機よりもガス検知用赤外線カメラを使用した方が、こうした報告作業でもメリットがあります。 「嗅覚探知機を使用した場合、ガス漏れの場所を言葉で説明する必要がありましたが、正確な場所がうまく伝わらないこともありました。 一方、ガス検知用赤外線カメラを使用すれば、作業指示書に映像ファイルを添付するだけで、メンテナンス担当者にも漏出場所は一目瞭然です。 これで漏出の報告作業に取られる時間も少なくなり、プラント現場での漏出の検出作業やその他業務に、より時間を確保できます。」
頻繁に検査を実施
Schiller氏によれば、FLIR GF306ガス検知用赤外線カメラの使用によりガス漏れの検査時間が短縮された結果、検出頻度を大幅に増やすことができました。 「嗅覚探知機のみを使用していた時は、2年ごとに検査を実施していました。 100km以上にも及ぶ本プラント全域のパイプ検査を完了するには、嗅覚探知機を扱う検査チームで作業にあたり、プラント全体の検査に丸1週間もかかります。 しかしガス検知用赤外線カメラを使用すれば、作業員1名により、わずか1日で完了してしまいます。 ガス検知用赤外線カメラを導入した現在では、毎年2回プラント全体の検査を実施し、さらに業務開始時にも毎回簡単な検査を行っています。 このように、検査頻度が大幅に増えました。」
ステヌングスンドのBorealis社のプラントで使用されているガス検知用赤外線カメラFLIR GF306のように、高頻度に使用する機器は、軽量・コンパクトかつ人間工学的な設計に基づき、使用者の背中や腕に負担をかけないタイプが最適でしょう。 FLIR GFシリーズの全てのガス検知用赤外線カメラは、人間工学に基づいた設計により、身体に負担をかけない工夫が随所に採用されています。 FLIR GF306ガス検知用赤外線カメラは、回転式ハンドル、ダイレクトアクセスボタン、傾斜可能なビューファインダーとLCDスクリーンが搭載されています。エンドユーザーの視点に基づいた高度に人間工学的な設計により、作業者の安全性が向上します。 FLIR GF306の総重量はわずか2.4 kgと、小型軽量化を実現しています。
赤外線を吸収
FLIR GF306ガス検知用赤外線カメラは、冷却型の量子井戸型赤外線検出素子(QWIP)を搭載しており、温度分解能は25mK(0,025℃)、解像度320 x 240ピクセルの熱画像が生成されます。 GFシリーズは、特定波長の赤外線電磁波を吸収するというガスの性質を利用して ガスを視覚化します。 FLIR GFシリーズの全モデルは、スペクトルフィルター、焦点面アレイ、ガスが赤外線を吸収する特定波長域に対応したレンズシステムから構成されます。 ガスが赤外線を吸収し、ガス漏れの背後にある物体からの赤外線放射を妨害するため、ガス漏れが白煙または黒煙のように表示されます。色はカラーパレットの設定をホワイトホットまたはブラックホットに切り替えることで変更できます。
録画機能
FLIR GF306ガス検知用赤外線カメラは、リアルタイムに可視化するだけでなく、可視光ビデオ/サーマルビデオでの録画も可能です。 Schiller氏は、次のように説明しています。「この機能は非常に重要です。ガスは煙のように動くため静止画よりも動画の方がはっきりと見えるのです。 メンテナンスチームへガス漏れの報告を行う際には、通常、まず[ビジュアルビデオモード]で現場状況をビデオで録画し、ガス漏れの発生場所を教えます。それから[ガス検出モード]に切り替えてガス漏れの様子を見せてから、再び、[ビジュアルビデオモード]に戻り漏出の位置を確認しています。 この方法は非常にうまく機能しています。」
Schiller氏はこう続けます。「本プラントは比較的新しい施設であり、数年前に旧ポリエチレンプラントから建て替えられました。 当初、新たなポリエチレンプラントはいくつか問題点を抱えていました。しかしガス検知用赤外線カメラの導入により、現在、世界でも極めて漏出発生率の低いポリエチレンプラントとなりました。 新たなプラントは、旧プラントの2倍のポリエチレン生産量を誇りながら、漏出による揮発性有機化合物(VOC)の排出量はわずか10分の1にまで低減されています。 ここまで漏出量を削減できたのは、FLIR GF306ガス検知用赤外線カメラの能力によるものと私は見ています。」
想定外の場所でのガス漏れも的確に検出
Schiller氏によれば、ガス検知用赤外線カメラには、想定外の場所でガス漏れが起きても、より確実に検知できるという利点があるようです。 「ガス漏れは、時には予想もつかない場所で起こります。 例えば、カーブしたパイプに補強パイプが溶接されていたのですが、溶接工が強く溶接しすぎたためにパイプから補強用パイプにガスが流入していたのです。 ガス検知用赤外線カメラでは熱画像で非常に明瞭に可視化できるため、補強パイプからのガスの漏出場所はごく簡単に特定できました。しかし仮に、嗅覚探知機でパイプからの漏出を検出しようとした場合、ガス漏れの検出には膨大な時間がかかっていたでしょう。まさか補強パイプからガス漏れしようとは、誰も考えませんからね。」
「また、想定外に断熱材からのガス漏れが発見されたケースもありました。 断熱材の末端の接続部位で漏出が起きたことにより、断熱材の背面でガスが漏れ出し、さらに断熱材の反対側の末端部でも再びガス漏れが起きました。 このように、ガス検知用赤外線カメラでは漏出を的確に検出できたものの、嗅覚探知機ではまず検出できなかったであろう実例は他にもまだたくさんあります。 嗅覚探知機で漏出を検出する条件は、装置を適正な位置に設置することです。つまり、検査者は漏出場所を推定した上で、その付近に装置を設置する必要があります。 一方、ガス検知用赤外線カメラでは、単にカメラレンズを向けるだけで漏出物を簡単に可視化できます。 漏出検出を素早く簡単に行えるということは、つまり、より徹底的な検査を実施できるということです。」
投資価値は十分
「嗅覚探知機ははるかに安価であるため、価格的な理由から、ガス検知用赤外線カメラの購入に踏み切れない企業もあるでしょう」とSchiller氏。 「しかし、購入価格だけで全てを判断すべきではありません。 まず、嗅覚探知機を使用した調査では膨大な労力を要します。人件費は、少なくともここヨーロッパでは、決して安価とは言えません。 さらに、嗅覚探知機では想定外の場所で漏出が起きた際に特定が困難であり、漏出を見落とすケースも多くなります。一方、ガス検知用赤外線カメラを使用すれば、作業者や周辺住人の安全性を確保できることになります。安全とは、最も投資しておくべきものと私は考えています。 ガス検知用赤外線カメラの導入により、プラント作業者の安心感も格段に向上します。 作業者は、FLIR GF306ガス検知用赤外線カメラによりガス漏れが完全に管理下にあることを知り、安心して作業に従事できます。」
「さらに、ガス検知用赤外線カメラの使用により、大気への放出ガス量を大幅に低減できます」とSchiller氏は続けます。 「当プラントの主要原料はガスであり、ガス漏れが起きるということは、つまり、利益の損失になります。 ガスは、プラスチック製品の原料となる貴重な資源です。 ガス漏れにより大切な資源が失われれば、当然ながら利益の損失に繋がります。 ガス検知用赤外線カメラの使用により、ガス漏出量がはるかに削減されます。結果的に、当初の購入費用は長期的には相殺されることになります。 だからこそ、ガス検知用赤外線カメラは、まさに投資価値の高い優れたツールと言えるのです。」