FLIR T500シリーズのマクロモード:1つのレンズで小さな対象物の温度分布測定を可能にするソリューション

サーモグラフィカメラは、研究開発や品質保証のさまざまな段階で活用されています。 電子機器の検査は赤外線画像の最も一般的な用途の1つで、通常はプリント基板ユニット (PCBA)のホットスポットを検出し、さまざまな部品が設計限界内で動作しているかどうかを確認するものです。

電子機器の小型化が進む昨今、最も一般的な表面実装PCBA部品のサイズは大きいものでも0603(1.6mm×0.8mm)、小さいものでは0201(0.6mm×0.3mm)しかありません。 こうした部品の温度を正確に測定するには、ターゲット上で最低3×3ピクセル(計9ピクセル)、精度を向上するには10×10ピクセル以上の画素面積が必要になります。

多くのサーモグラフィカメラでは、1ピクセルがターゲット上で600µm(0.06mm)をカバーし、これがカメラのスポットサイズになります。 そのため、0201部品で最低3×3ピクセルのカバー範囲を確保するには、 より精密なスポットサイズ(例:100µmなど)を実現できるカメラとレンズの組み合わせが必要となります。 0201部品の特定箇所でホットスポットの特性を適切に把握するには、 より小さなスポットサイズが求められます(図1)。

赤外線画像はさまざまな用途に活用できる技術ですが、単焦点レンズを1つしか搭載していないカメラではできることには限界があります。 電子機器の検査でホットスポットの検出や温度の測定を行い、小型部品の熱応答特性を適切に把握するには、マクロレンズを追加して十分な倍率を確保しなければならない場合が少なくありません。 レンズを複数用意すれば優れた画像を生成できますが、コストパフォーマンスが良いとは言えません。 フリアーシステムズならではのマクロモードを利用すれば、1つのレンズでさまざまな小型対象物を検査する際の選択肢が広がります。

マクロモードでは、レンズを交換しなくても、小さな対象物の温度を正確に測定できます(図2)。 24°標準レンズを搭載したフリアーシステムズのサーモグラフィカメラは、レンズを交換せずに、マクロモードで71µmのスポットサイズを実現します。 このスポットサイズであれば温度を正確に測定し、1.6mm×0.8mmサイズの0603部品でも熱応答特性を把握できます。 0.6mm×0.3mmサイズのホットスポットや不良部品を検出することも可能です。

従来のマクロレンズには、往々にして作動距離が短いという課題があります。 また、PCBAに背の高い部品があると、カメラを接近させて背の低い部品に焦点を合わせることが難しくなります。 しかし、フリアーシステムズのマクロモードを利用すれば、スポットサイズを小さくしながらちょうどよい場所にカメラを配置できます。 例えば、24°レンズ搭載のFLIR T540では、焦点を合わせるためにターゲットから150mm以上離す必要がありますが、 この距離ではスポットサイズが140µmに制限されます。 そこでマクロモードに切り替えると、カメラから ターゲットまでの最小距離が短くなるため、表面実装部品などの小さな対象物にも瞬時に焦点が合います。 このカメラはマクロモードを有効にすることで、レンズを交換せずに71µmのスポットサイズを実現し、60mmの距離から鮮明な画像を撮影できます。

キャリブレーションプロセス中にカメラの検出器の位置を調整すればマクロモードが作動し、センサーとレンズ間の作動距離が長くなります。 ファームウェアアップデートによってマクロモードを有効にすると、カメラのGUI に「イメージモード」メニューが追加されます。 ただし、赤外線画像の焦点と鮮明度は調整された検出器の位置に左右されるため、可視光のMSX画像は調整不良になります。 こうした妥協が生じるのは、マクロモードのカメラが赤外線画像のみを保存するからです。 

フリアーシステムズのマクロモードは研究開発や品質保証等の専門家にとって、実に画期的な機能です。この機能を利用すれば、レンズを追加しなくても、PCBAをはじめとする電子部品の試験に必要な柔軟性を確保できます。 広範囲の調査やPCBA全体の検査には 24°標準レンズをご利用いただけます。 ホットスポットや対象範囲を絞り込んだら、マクロモードを有効にして、より詳細な検査や熱解析を行ってください。レンズを交換する必要はありません。 マクロモードを利用して電子機器の試験を効率化する方法については、フリアーシステムズの担当者までお問い合わせください。